オンプレキャリアフリーランス
guide 2026/6/17

データセンターネットワークの基礎 — リーフ・スパイン構成の考え方

従来の3層型ネットワークの課題、East-Westトラフィック増加の背景、リーフ・スパイン(Clos型)の基本構造と、設計で確認しておきたい観点を中立に整理します。

  • #データセンター
  • #ネットワーク
  • #リーフスパイン
  • #スイッチ
  • #インフラ設計

データセンター内のサーバを束ねるネットワークは、長らく「コア・ディストリビューション・アクセス」という3層構造で語られてきました。近年はこれに代わり、「リーフ・スパイン」と呼ばれる構成を採用するデータセンターが増えています。名前は聞いたことがあっても、なぜこの構造が選ばれるのか、従来型と何が違うのかまで整理する機会は意外と少ないかもしれません。

本記事では、従来の3層型が抱える課題から出発し、リーフ・スパイン構成がどのような考え方で成り立っているのか、そして実際の設計でどのような観点を確認するのかを、順を追って解説します。オンプレミスやデータセンターのインフラに関わる方が、ネットワーク設計の全体像をつかむための入り口として読んでいただける内容です。なお本記事は2026年6月時点の一般的な技術解説であり、具体的な機器のスペックや速度世代は、後述のとおり公式資料での確認を前提としています。


従来の3層(コア/ディストリ/アクセス)型の課題

まず、長く使われてきた3層型ネットワークの形をおさらいします。すでにご存じの方は次のセクションまで読み飛ばしてください。

3層型は、役割の異なるスイッチを縦に積み重ねた構造です。

  • アクセス層: サーバやストレージが直接つながる最下層のスイッチ。サーバを収容する出入り口にあたります。
  • ディストリビューション層(集約層): 複数のアクセススイッチを束ねる中間層。ポリシー適用や経路集約を担います。
  • コア層: 全体を束ねる最上位層。データセンター内外との大きな経路を受け持ちます。

この構造は、外部とのやり取り、つまりクライアントとサーバの間を行き来する通信(南北方向の通信、いわゆるNorth-Southトラフィック)が中心だった時代には、素直に機能していました。利用者からのリクエストはアクセス層から上位へ向かい、コアを経て外部へ抜ける、という分かりやすい流れだったためです。

一方で、3層型にはいくつかの構造的な課題があります。

ひとつは、サーバ同士の通信で経路が長くなりやすい点です。あるアクセススイッチに接続したサーバから、別のアクセススイッチに接続したサーバへ通信する場合、いったん上位の集約層やコア層まで上がり、また下りてくる必要があります。サーバの置かれる位置によって通信が通る経路の長さが変わり、レイテンシ(通信の応答にかかる時間)や使える帯域にばらつきが生まれます。

もうひとつは、冗長構成と帯域の使い切りにくさです。L2(データリンク層、イーサネットのレベル)でループを防ぐためにスパニングツリープロトコル(STP、経路のループを防ぐためにあえて一部の経路を遮断する仕組み)が使われてきましたが、これは冗長化した経路の片方を待機状態にするため、用意した帯域を常に半分しか使えない、といった状況が起こり得ます。

さらに、規模を広げるときに上位スイッチへ負荷が集中しやすい点もあります。サーバを増やすたびに、束ねる集約層やコア層の負荷が増し、上位の機器をより大きなものへ置き換える「スケールアップ」が必要になりがちです。

これらは3層型が劣っているということではなく、「想定していたトラフィックの向き」と「現在のトラフィックの向き」がずれてきたことから生じる課題と捉えるのが適切です。


East-Westトラフィック増加の背景

ここでいう「トラフィックの向き」を、もう少し整理します。

ネットワークの通信は、向きによって大きく二つに分けて語られます。

  • North-South(南北)トラフィック: 利用者や外部システムと、データセンター内のサーバとの間を行き来する通信。クライアントからのリクエスト応答などが該当します。
  • East-West(東西)トラフィック: データセンター内のサーバ同士、あるいはサーバとストレージの間でやり取りされる通信。外部には出ず、内部で完結します。

3層型が広く使われた時代は、North-Southが中心でした。しかし近年は、内部で完結するEast-Westトラフィックの比重が大きく高まってきました。その背景には、いくつかの技術的な流れがあります。

ひとつはサーバ仮想化とコンテナの普及です。1台の物理サーバ上で多数の仮想マシンやコンテナが動き、それらが相互に通信します。マイクロサービスのように、ひとつのアプリケーションが多数の小さなサービスに分かれて連携する構成では、サービス間の通信がそのままEast-Westトラフィックになります。

ふたつめは分散処理・分散ストレージです。大量のデータを複数のサーバで分担して処理する仕組みや、データを複数ノードに複製・分散して保持するストレージでは、ノード間で大量のデータがやり取りされます。これも内部で完結するEast-West通信です。

みっつめはAI/HPC(高性能計算)系のワークロードです。機械学習の学習処理や大規模な数値計算では、多数の計算ノードが互いに中間結果を交換しながら処理を進めます。こうした用途では、ノード間通信の帯域やレイテンシのばらつきが、全体の処理時間に影響しやすいことが知られています。

つまり、「外部とのやり取り」よりも「内部のサーバ同士のやり取り」が通信の主役になってきた、という変化です。サーバの置き場所によって内部通信の経路長が変わる3層型の特性が、このEast-West中心の時代には課題として目立ちやすくなります。そこで注目されたのが、リーフ・スパイン構成です。


リーフ・スパインとは

リーフ・スパインは、スイッチを2つの層に分けて、その間を網の目のように接続するネットワーク構成です。理論的には、古くから知られる「Clos(クロス)ネットワーク」と呼ばれる考え方を、データセンター向けに整理したものと説明されます。Closは、少ない段数のスイッチで多数の入出力を効率よくつなぐための交換網の設計理論で、考案者の名前にちなんでこう呼ばれます。

構成要素は二種類です。

  • リーフ(leaf)スイッチ: サーバやストレージが接続される層。3層型でいうアクセス層に近い役割で、ラックの上部に置かれることが多く、Top of Rack(ToR)スイッチと呼ばれることもあります。
  • スパイン(spine)スイッチ: リーフ同士をつなぐための背骨にあたる層。サーバは直接接続せず、リーフ同士を相互接続する役割に徹します。

この構成の最大の特徴は、すべてのリーフが、すべてのスパインに接続される点です。リーフ同士が直接つながるのではなく、必ずいずれかのスパインを経由してつながります。接続関係を表にすると、次のようになります。

スパイン1スパイン2スパイン3スパイン4
リーフA接続接続接続接続
リーフB接続接続接続接続
リーフC接続接続接続接続
リーフD接続接続接続接続

この「全リーフ × 全スパイン」の接続によって、次のような性質が生まれます。

  • どのサーバ間も経由するスイッチ数が一定: あるリーフのサーバから別のリーフのサーバへ通信する場合、「リーフ → スパイン → リーフ」という同じホップ数(経由するスイッチの数)で到達します。サーバの置かれる位置によって経路長が変わりにくく、レイテンシのばらつきを抑えやすくなります。
  • 経路が複数あり、並行して使える: リーフから見ると、上位のスパインが複数あるため、宛先までの経路も複数存在します。これらを同時に使うことで、帯域を有効に活用しやすくなります(経路の使い方は後述のECMPで触れます)。
  • 横に広げやすい: サーバを増やすときはリーフを足し、リーフ間の帯域を増やしたいときはスパインを足す、という形で規模を広げられます。上位の1台を大型化するのではなく、同種の機器を並べて増やす「スケールアウト」の発想に向いています。

なお、ここで述べたのは2層のリーフ・スパインです。さらに大規模になると、スパインの上にもう一段(スーパースパインなど)を重ねた多段Closとして拡張する設計も知られています。本記事では基本となる2層構成を中心に扱います。


設計で見る観点

リーフ・スパインは構造としては単純ですが、実際に設計する際にはいくつか確認しておきたい観点があります。代表的なものを整理します。

オーバーサブスクリプション比

オーバーサブスクリプション比とは、「サーバ側に向けた帯域(下り)」と「スパイン側に向けた帯域(上り)」の比率のことです。たとえばリーフがサーバ側に合計で大きな帯域を収容している一方、スパイン側への帯域がそれより小さい場合、サーバが一斉に通信すると上り側が混雑する可能性があります。

この比率が大きいほど機器コストは抑えられますが、混雑時に帯域が不足しやすくなります。逆に比率を小さく(理想は1対1に近く)すれば余裕は増えますが、その分スパイン側の帯域やポートを多く用意することになります。ワークロードがどの程度サーバ間通信を発生させるかを踏まえて、許容できる比率を見積もるのが設計の出発点になります。

L2/L3の境界をどこに置くか

ネットワークには、同一セグメント内でイーサネットフレームをやり取りするL2(データリンク層)と、IPアドレスで経路を選んで転送するL3(ネットワーク層)の区別があります。リーフ・スパイン構成では、リーフとスパインの間をL3(IPでのルーティング)でつなぐ設計が一般的に採られます。L3で結ぶことで、前述のSTPに頼らずに複数経路を同時に使いやすくなるためです。

一方で、サーバが同一セグメント(同じL2)にいることを前提とするアプリケーションや、仮想マシンの移動などの要件があると、L3の網の上でL2の通信を運ぶ仕組み(オーバーレイと呼ばれる技術群)の検討が必要になります。どこまでをL2で扱い、どこからL3にするかという境界の置き方は、設計の重要な分岐点です。具体的な実現方式は採用する機器やソフトウェアによって異なるため、ベンダーの公式資料で対応状況を確認するのが確実です。

ECMP(複数経路の等価分散)

**ECMP(Equal-Cost Multi-Path、等コストマルチパス)**とは、宛先までのコストが等しい複数の経路がある場合に、それらへ通信を分散して同時に使う仕組みです。リーフ・スパインでは、あるリーフから別のリーフへ向かう経路が複数のスパイン経由で等価に存在するため、ECMPによってこれらの経路へ通信を振り分けられます。

これにより、用意した経路を片方だけ待機させるのではなく、並行して使えるようになります。ただし、分散は通常、通信の流れ(フロー)単位で行われるため、ひとつの大きな通信が複数経路に分かれて速くなるわけではない、という点は押さえておく必要があります。どのような単位で分散するか、何経路まで束ねられるかは機器の実装に依存するため、設計時にベンダーの仕様を確認します。

スケール時の足し方

規模を広げるときの「足し方」も、あらかじめ考えておきたい観点です。リーフ・スパインでは、収容するサーバを増やすならリーフを追加し、リーフ間の帯域を厚くしたいならスパインを追加します。ただし、新しいスパインを足すと、既存のすべてのリーフからその新スパインへの接続を引く必要があります。つまり、将来どこまでスパインを増やす可能性があるかによって、リーフ側に確保しておくべき上り用ポートの数が変わってきます。

最初に小さく始める場合でも、後からスパインを増設したときに配線やポートが足りなくなることのないよう、増設の上限をある程度想定してリーフのポート配分を決めておくと、後の拡張がしやすくなります。

なお、リーフ・スパイン間で用いる回線の速度世代(たとえば何ギガビット、何百ギガビットといった区分)や、対応する光モジュールの種類は、年々更新が続いている領域です。本記事では具体的な数値には踏み込みません。利用を検討する際は、IEEEなどの規格、スイッチや光モジュールを提供するベンダーの公式資料、業界のMSA(複数ベンダーが相互接続のために取り決める公開仕様)などで、最新の対応状況を確認することをおすすめします。あわせて、「規格として定められている」ことと「実運用で広く使われている」ことは別であり、両者を分けて捉えると判断を誤りにくくなります。


導入時の現実的な注意点

最後に、リーフ・スパインを実際に採り入れるうえで、現実的に意識しておきたい点を挙げます。

第一に、構成が単純であることと、運用が簡単であることは別です。リーフ・スパインは構造こそ整然としていますが、機器の台数や配線本数は3層型より増える傾向があります。多数のスイッチを一貫した設定で維持するには、設定の自動化や構成管理の仕組みをあわせて整えることが、運用負荷を抑えるうえで現実的な選択肢になります。

第二に、既存環境からの移行は段階的に検討することです。すでに3層型で稼働している環境を一度に置き換えるのは負担が大きいため、新規に増設する区画から採用する、特定の用途のクラスタから切り替える、といった段階的な進め方が取られることがあります。移行中は新旧の構成が併存するため、その間の経路設計やアドレス設計を事前に整理しておくと混乱を避けやすくなります。

第三に、自社のトラフィック特性を確認することです。リーフ・スパインはEast-Westトラフィックが多い環境で利点が出やすい構成です。逆に、外部とのやり取りが中心でサーバ間通信が少ない環境では、3層型のほうが構成や費用の面で見合う場合もあります。流行ではなく、自社のワークロードがどちらの通信を多く生むのかを踏まえて選ぶことが大切です。


まとめ

本記事のポイントを整理します。

  • 従来の3層型は、外部とのやり取り(North-South)が中心の時代に適した構造でした。サーバ同士の通信では経路長や帯域にばらつきが生じやすく、East-West中心の現在には課題が目立ちやすくなります。
  • East-Westトラフィックの増加は、仮想化・コンテナ、分散処理、AI/HPCといった流れが背景にあります。内部で完結するサーバ間通信が、通信の主役になってきました。
  • リーフ・スパインは、全リーフが全スパインに接続するClos型の構成です。どのサーバ間もホップ数が一定になりやすく、複数経路を並行して使え、横方向に広げやすい点が特徴です。設計では、オーバーサブスクリプション比、L2/L3の境界、ECMP、スケール時の足し方を確認します。

どの構成にも向き不向きがあります。自社のトラフィック特性と運用体制を踏まえ、検証可能な事実と公式資料にもとづいて選んでいくことが、堅実なネットワーク設計につながります。


出典

  • IEEE 802 LAN/MAN Standards Committee(イーサネット関連規格の一次情報): https://www.ieee802.org/
  • IETF RFC(ECMPやルーティングに関する標準仕様。例: 等コストマルチパスを扱うRFC群): https://www.rfc-editor.org/
  • 各スイッチ/光モジュールベンダーの公式技術ドキュメント(対応速度世代・機能の最新仕様): 利用を検討する製品のベンダー公式サイトで確認してください。
  • 業界MSA(Multi-Source Agreement)の公開資料(光トランシーバ等の相互接続仕様): 該当するMSAの公式公開資料で確認してください。

※本記事は2026年6月時点の一般的な技術解説です。具体的な速度世代・機器スペック・対応状況は、上記の一次情報および各ベンダーの最新の公式資料をご確認ください。

For Freelancers

オンプレ・インフラ案件、お探しですか?

案件探しから単価交渉・契約手続き・参画後のフォローまで、専任コンサルタントが伴走します。 お名前とメールだけで、まずは無料でご相談いただけます。

案件を探す